2015年度税制改正において、父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度が創設され、内閣府では同制度に関するQ&Aを作成し、内閣府ホームページ上で公表しております。
それによりますと、Q&Aには、同制度の概要や適用を受けるための手続きとともに、法案が提出されてから注目されていた非課税対象となる結婚・子育て等の具体的な費目をはじめ、贈与者が死亡した場合の取扱いなどが掲載されております。
非課税枠は1,000万円ですが、結婚に際して支出する費用については300万円が限度となります。
その対象となる結婚・子育て資金(婚礼、住居、引越、妊娠、出産の各費用と、子の医療費、子の保育料に充てるための金銭)の詳細が明らかになりました。
婚礼費用は、婚姻の日の1年前の日以後に婚礼事業者に支払われる婚礼のための施設の提供(会場費)、衣服の貸与(衣装代)、贈答品の販売(引出物代、お祝い返し代)その他の便益の提供(メイクアップ代、人件費、飲食代など)及びこれらに付随する物品の給付費用(ペーパーアイテム代)が対象となります。
住居費用については、住居の賃貸借契約で、婚姻の日の1年前の日から婚姻の日以後1年を経過する日までの期間に締結されるものに基づき、締結の日以後3年を経過する日までに支払われる家賃、敷金、共益費のほか、礼金、仲介手数料及び契約更新料が対象となります。
引越費用については、婚姻の日の1年前の日から婚姻の日以後1年を経過する日までの期間にする転居で、転居のための生活用家具その他の資産の運送費用が対象となります。
出産費用については、正常分べん・流産・死産の別を問わず、出産のための入院から退院までに要した費用が広く対象となります。
具体的には、出産の日以後1年を経過する日までに支払われる出産に係る分べん費、入院費、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置・手当料、入院中の食事代、その他出産のための入院から退院までの間に要する費用が対象となります。
受贈者自身が未婚の場合なども対象となりますので、あわせてご確認ください。
(注意)
上記の記載内容は、平成27年6月11日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
◆必ずチェックされる項目
法人の税務調査で必ずチェックされる項目の一つは、消費税の課税仕入、非課税(または不課税)仕入の区分間違いの有無です。
最近の税務調査では、この消費税申告の計算の基礎となる消費税区分集計表を、調査日より前に、あらかじめ提出するよう求められるケースもあります。
◆科目ごとのよくある間違い
帳簿作成や会計ソフトの入力時に、消費税区分を間違えることがありますので、以下の項目は課税仕入れにならない(納める消費税から差し引けない)ということを覚えておくと良いでしょう。
(1)海外出張旅費
消費税は日本国内の消費に課税されるものですので、国外での飲食費や宿泊費などは消費税がかかっていません。海外への飛行機代やその日当なども同様です。
(2)社宅などの家賃
居住用の家賃支払いについて、消費税は非課税とされています。賃貸借契約書で使用目的に居住用と記載がある場合、消費税がかかっていませんので、注意が必要です。
(3)クレジットカード手数料
飲食店などの小売業では、カード売上に係る手数料を引かれて、カード会社から売上金額が入金されます。この手数料は非課税とされておりますので、消費税はかかっていません。
(4)慶弔費、祝い金、見舞金
従業員に対して支給するこれらの費用は「福利厚生費」、取引先に対しては「交際費」となりますが、やはり消費税はかかっていませんので、課税仕入にしないよう注意してください。
(5)同業者団体や組合の通常会費
何らかのサービスに対して支払うものではなく、通常の業務運営のために支払う年会費などは消費税がかかっていません。
◆経理担当者と税理士のチェックで防げる
これらの間違いがあると、修正申告によって消費税を後から納めることになってしまいます。日々の帳簿作成のときから税務調査で指摘されないよう気を付けましょう。
◆改定された中小企業両立支援助成金 以前からあった育児関連の中小企業両立支援助成金は支給額が上がったり、要件が緩和されたりと内容が変更されているので紹介します。
◆代替要員確保コース ・育児休業を終了した労働者を、原職又は原職相当職に復帰させる旨の取り扱いを就業規則等に規定する ・休業取得者の代替要員を確保 ・休業取得者を原職又は原職相当職に復帰 支給額 対象労働者1人あたり 30万円 支給対象者が期間雇用者 10万円加算 1企業5年間、1年度延べ10人まで 支給申請期間 育児休業終了日の翌日から起算して6ヶ月を経過する日の翌日から2ヶ月以内
◆期間雇用者継続就業支援コース ・期間雇用者と正社員が同等の要件で利用できる育児休業制度、育児短時間勤務制度を就業規則に規定 ・期間雇用者の育児休業取得者を原職又は原職相当職に復帰させ、6ヶ月以上継続して雇用等 支給額 1人目 40万円/2人から5人目までは15万円 休業終了後、正社員で復職した場合は1人目10万円、2人から5人目5万円加算 育児休業を終了した期間雇用者が平成25年4月1日以降28年3月31日までに出た事業主が対象です。 支給申請期間 育児休業終了日の翌日から起算して6ヶ月を経過する日の翌日から2ヶ月以内
◆育児復帰支援プランコース ・労働者と面談し、育児復帰プランナーの支援を受けて育児復帰支援プランを作成 ・プランの実施により、育児休業予定者の業務の引き継ぎを行い、当該者が3ヶ月以上育児休業(産後休業を含む)を取得 ・プランの実施により上記の対象となった育休取得者の育休中に職場に関する情報、資料の提供を実施 ・職場復帰前後に育児休業取得者と面談し原職又は原職相当職に復帰させ、6ヶ月以上継続して雇用 1企業各1回支給 育児休業取得時 30万円 職場復帰時 30万円 |
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2015年度税制改正において、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく新築のサービス付き高齢者向け賃貸住宅の固定資産税の軽減措置が、自治体が独自に条例で規定する地域決定型地方税制特例措置(わがまち特例)を導入したうえで、2017年3月末まで2年間延長されました。
高齢社会への進行に対応するため、国が力を入れているのがサービス付き高齢者向け賃貸住宅です。
サービス付き高齢者向け賃貸住宅とは、バリアフリー化された居住空間で医療・介護等のサービスが受けられる高齢者向けの住宅をいいます。
税制面では、これまで2011年10月20日から2015年3月31日までの間に新築された住宅が軽減対象でしたが、適用される期間が2年間延長されました。
また、固定資産税の3分の2が新築後5年間減額されますが、減額対象となるのは居住部分のみ1戸当たり120平方メートルまでで、サービス付き高齢者向け住宅部分に限られ、店舗等が併設されていても、その部分は対象となりませんので、ご注意ください。
具体的な減額要件として、
①サービス付き高齢者向け住宅として登録されていること
②床面積が1戸当たり30平方メートル以上280平方メートル以下(共用部分を含む)
③戸数が5戸以上
④耐火建築物(主要構造部を耐火(準耐火)構造とした建築物)であること
⑤国又は地方公共団体からサービス付き高齢者住宅に対する建設費補助を受けていること
⑥新築であり、入居者と賃貸借契約を結ぶものに限ります。
なお、適用を受けるためには、住宅を新築した翌年の1月31日までに、必要書類を添えて申告する必要があります。
上記の必要書類は、サービス付き高齢者向け住宅に対する固定資産税の減額申告書、サービス付き高齢者向け住宅として登録を受けた旨を証する書類の写し、国又は地方公共団体の建設費補助を受けている旨を証する書類の写し、各階の平面図などをいいますが、自治体によって異なることもあるため、要件等とあわせて事前にご確認ください。
(注意)
上記の記載内容は、平成27年6月11日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
◆マイナンバーへの国家総動員態勢
10月からのマイナンバー配布に向けて、マイナンバーの周知化情報が溢れ出しました。ネット世界には「マイナンバーの受け取りを拒否しよう」などという書き込みもありますが、マスコミや実業社会、マイナンバーに直接関わる税理士・社労士などの世界では、素直に受け容れることを前提にした情報しか存在しません。疑問を呈することを排除する同質化社会がここにも現れている印象を受けます。
◆マイナンバー漏洩対策は可能か
税理士とその顧客の大半にとっては、独自にマイナンバー漏洩対策を行うことは出来ないと思われます。
ベネッセの顧客情報漏洩事件2070万件というような大量の情報を抱えていないので、情報窃盗の対象にならないだろう、と判断されるものの、クラウドサービスとして給与計算情報をバックアップしているところからの流出は十分考えられます。
流出ルートが不明なまま、流出の事実だけが発覚した場合、漏洩対策不全は、刑事罰や損害賠償のリスクを生み出します。
◆税と社会保険料徴収事務をやめる
漏洩リスクから解放されるようにするには、漏洩リスク対策を完全に実施でき、損害賠償にも備えられる、超大手企業に、給与計算事務等や社会保険事務を全面委託してしまうのが、最善の策です。そして、そのような超大手企業が出現してくるかもしれません。
本当は、民間企業に無償で押し付けている源泉徴収事務や社会保険料徴収事務を廃止して、国家や自治体が直接行ってくれるのがベストです。
◆ベターな策としての情報不取得
マイナンバー情報を得て、使用した後に直ちにその情報を削除して不保持にする、のは煩雑で、ほとんど実行不可能です。
そもそも、マイナンバー情報を得なかったら、何か困るのでしょうか。給与支払や年末調整に差し障りがあるのでしょうか、税理士個人のマイナンバーを知らないまま顧問料の支払が出来ないなんてことになるのでしょうか、マイナンバーを書かなかったら、健康保険証を発行してくれないのでしょうか、多分何も困ることにはならないと思われます。
マイナンバーが本人確認手続を簡略にする利便性を提供するだけだとしたら、その利便性の享受の放棄で済むことです。
2015年度税制改正において、2016年から日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等が義務付けられます。
具体的には、確定申告において、海外に住む親族(非居住者)に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける人(居住者)は、「親族関係書類」及び「送金関係書類」を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示しなければならない。
上記の「親族関係書類」とは、①戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの及びその親族の旅券の写し②外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するものをいいます。
また、「送金関係書類」とは、その年における①金融機関が行う為替取引によりその親族へ支払われたことを明らかにする書類②クレジットカード発行会社のカードを提示してその親族が商品等を購入したこと及びその商品等の購入代金に相当額をその居住者から受領したことを明らかにする書類をいいます。
この改正は、円滑・適正な納税のための環境整備の一環として行われ、その背景には、海外に住む扶養親族を実際より多く届け出ているのではないかと疑われる事例があり、申告時点でチェックし、不正防止につなげるものとみられております。
そして、給与等・公的年金等の源泉徴収において、非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は親族関係書類を、給与等の年末調整において、非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は送金関係書類を、非居住者である配偶者に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を、それぞれ提出・提示しなければならず、これらの書類は、確定申告時の添付、提示は不要となります。
なお、親族関係書類や送金関係書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等する必要があります。
この扶養控除等書類の添付等の義務化は、2016年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに2016年分以後の所得税について適用されますので、ご注意ください。
(注意)
上記の記載内容は、平成27年5月12日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
所得拡大促進税制、正式には、雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除です。
◆大企業に配慮した改正
大企業といえども適用要件の1つである①適用年度の給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額に対する増加率5%はそのハードルが高く、また、雇用者の新規採用に比して今後もかなりの退職者が見込まれることから、もう1つの適用要件である②平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額以上とはならず、結果、この特例が適用できないこととなる事態も想定されることから、平成26年度税制改正で次のような改正が行われました。
1つは、増加率は平成26年度2%、27年度は3%、平成28・29年度5%、そして、もう1つは、継続雇用者をベースにした平均給与等支給額の算定と平均給与等支給額が前期のそれを超えるとする改正です。この2つの改正により、大企業でもこの特例を容易に適用できる環境が整いました。
ちなみに、この継続雇用者とは、雇用保険の加入対象者で給与等の支給を受けた国内雇用者であり、前期と適用年度のいずれの事業年度においても給与等の支給を受けた者です。加えて、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づくところの継続雇用制度の対象者は除く、とされています。
◆中小企業への配慮があってしかるべし
いったい何が問題なのか、ですが、対象となる雇用者給与等支給額から、使用人兼務役員の給与等支給額は除かれている、ということです。そして、その上で、適用年度の給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額の2%増の要件を満たさなければこの特例が使えない、ということなのです。
仮に、基準年度において、使用人であったものが、その後の適用年度において役員、例えば、取締役経理部長、取締役営業部長といった役員に昇格した場合、当該使用人兼務役員になった者の給与等は基準年度では雇用者給与等支給額に含まれ、一方、適用年度において除かれることになり、適用年度の給与等支給額が基準年度のそれを上回ることにはならず、結果、この特例の適用を受けられない可能性は大となります。
平成26年度の税制改正においては、中小企業のこの点にも配慮した、使用人兼務役員の給与等支給額の取扱いについての改正が望まれたところでした。
2015年度税制改正において、研究開発促進税制の見直しがされました。
具体的には、外部の技術・知識を活用した研究開発である企業のオープンイノベーションを促進するため、特別試験研究費の税額控除率を引き上げるとともに、中小企業等の知的財産権の使用料等を対象費用に追加する等、オープンイノベーション型が拡充されることになりました。
しかし一方で、繰越税額控除限度超過額及び中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度は廃止されますので、ご注意ください。
これまでの研究開発促進税制は、一般試験研究費の総額の8~10%(中小企業12%)を法人税額の30%(2014年度までの時限措置で通常20%)まで、その事業年度の法人税から控除できる「総額型」(恒久措置)に加えて、試験研究費の増加額に係る税額控除(「増加型」)または平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除(「高水準型」)を選択適用して上乗せできる制度でした。
上記が2015年度税制改正において、上記の総額型における一般試験研究費の控除限度額を法人税額の25%(これまで30%)に引き下げ、特別試験研究費について法人税額の5%とする措置を別枠で設けました。
特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、これまで12%の税額控除率を、国の特別研究機関等や大学等と共同・委託して研究した場合は30%に、それ以外の企業間等のものは20%にそれぞれ引き上げ、企業に外部の力を積極的に導入するよう促す見直しがされました。
またこれまで、その事業年度に控除し切れなかった額は翌年度に繰り越すことができましたが、2015年4月1日からは、その繰越税額控除限度超過額及び中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度が廃止されます。
したがいまして、2015年3月31日までに開始する事業年度に係る繰越税額控除限度超過額等については、2015年4月1日以後開始事業年度に繰り越して控除することはできませんので、ご注意ください。
(注意)
上記の記載内容は、平成27年5月12日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
2015年度税制改正において、2015年7月から金融資産1億円以上の者に対し、出国時に含み益を課税される特例が創設されますが、これとあわせて、現行の財産債務明細書について、記載内容を充実するなどの見直しがされます。
財産債務明細書とは、所得金額が年間2,000万円を超える者を対象に、その年12月31日現在の財産の種類や数量、価額、債務の金額などの明細を記載した書類を申告書と一緒に提出するものです。
この財産債務明細書について、新たに「財産債務調書」として整備し、現行の提出基準である「その年分の所得金額が2,000万円超であること」に加え、「その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上であること、又は、同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であること」が提出基準とされます。
上記は、2016年1月1日以後に提出すべき財産債務調書から適用されます。
また、現行の記載事項についても見直しがされ、「財産の種類、数量及び価額」のほか、財産の所在、有価証券の銘柄等、国外財産調書の記載事項と同様の事項を記載します。
財産の評価については、原則として「時価」としますが、「見積価額」とすることもできます。
有価証券等については、取得価額の記載も必要となり、銘柄ごとに保有数や時価、取得価額のほか、保管を委託している金融機関の所在地も記入する必要があります。
この財産債務調書は、国外資産5,000万円以上の場合に提出する国外財産調書とは異なるものですが、国外財産調書と同様に、財産債務調書の提出の有無等により、所得税又は相続税に係る過少申告加算税等を加減算する特例措置が講じられます。
国外財産調書については、提出期限内に提出した場合には、そこに記載がある国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときでも、過少申告加算税等が5%軽減される優遇措置があります。
今後の動向に注目です。
(注意)
上記の記載内容は、平成27年5月7日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
◆進展する「カネ」「モノ」のグローバル化
日経新聞によれば、家計の外貨建て金融資産が約46兆円となり、約7年半ぶりに過去最高となったそうです。
その理由として①急速な円安で円建ての評価額が膨らんだこと、②国内の低金利や円の先安観を背景に海外投資志向も強まったことが挙げられており、特に富裕層の個人資産が増えているとのことでした。
その一方で海外からの不動産投資も拡大しているようです。2014年の海外企業による日本の不動産取得額はこれも過去最高の約1兆円で前年の約3倍となっており、国内不動産取引の約2割を占めたそうです。
円安を基因とした一連の現象ではありますが、それでも「ヒト」「モノ」「カネ」のうち、「カネ」「モノ」の国際間移動について、いよいよ障害が少なくなってきたことが実感されます。
◆国際私法~私法の国際間の抵触を調整
このようなご時世の中で「日本に居住する外国人が亡くなった場合」、あるいは「外国に居住する日本人が亡くなった場合」には、一体どの国の民法などの私法がどのように適用されるかが問題となります。
このような日本と外国の私法が抵触する状況を解決するために「国際私法」があります。日本では「法の適用に関する通則法」という「国際私法」が設けられています。
この「通則法」36条には「相続は、被相続人の本国法による」と規定されているため、亡くなった方の本国の相続関係の法律が適用されることになります。この適用される国の法律を「準拠法」といいます。
◆日本の相続税法ではどう考えるか?
国税庁ホームページの質疑応答事例の中に「被相続人が外国人である場合の未分割遺産に対する課税」というものが掲載されています。これによれば、「通則法」36条で相続は本国法によるとされているため、未分割の場合には、その被相続人の本国法による相続分で計算するとされています。
一方で、遺産に係る基礎控除額の計算の基礎となる法定相続人や法定相続分については、被相続人が外国人であっても、日本の民法の規定の適用があるものとした場合の法定相続人や法定相続分を基礎として、基礎控除額や相続税の総額を計算することとされています。