政府税制調査会の法人課税専門委員会は、法人税の改革案を公表しました。
それによりますと、「法人税改革は、必ずしも単年度での税収中立である必要はない」として、法人税率引下げの減税先行を容認しております。
また、法人税の改革とあわせて、給与所得控除などの法人課税以外の税目、国際課税の見直しも含めた関連する他の税目についても、同様に見直しを行う必要があるとし、恒久減税である以上、恒久財源を用意することが鉄則であるとの考え方を示しております。
今回の法人税改革の主な目的については、
①立地競争力を高めるとともに、わが国企業の競争力を強化するために税率を引き下げること
②法人の課税ベースが狭くなり、負担が一部の黒字法人に偏っている現在の負担構造を見直すことの2つを掲げております。
上記①においては、企業が国を選ぶ時代にあって、国内に成長分野を確保するには、「法人税率の引下げは避けて通れない課題」との基本スタンスを強調して指摘しております。
また、上記②においては、現在、すべての法人の1%に満たない資本金1億円以上の企業が、法人税収の6割以上を担っており、他方では、納税企業が全体の3割に満たないという状況を指摘しております。
課税ベースを拡大して、代わりに税率を引き下げることにより、高収益を上げる企業の税負担を緩和し、法人課税を「広く薄く」負担を求める構造にすることは、企業の成長を後押しし、新しい産業や新規開業が行われやすい環境を作ることになると指摘しております。
注目される代替財源として挙げられているのは、
①租税特別措置(政策減税)の縮小・廃止
②欠損金(赤字)の繰越控除制度の見直し
③受取配当の益金不算入制度の縮小
④減価償却制度の見直し
⑤中小法人への課税強化
⑥公益法人等への課税強化
⑦外形標準課税の強化など地方法人課税の見直しなどが具体的な改革事項とされております。
加えて、国際課税の見直しや、給与所得控除などの法人課税以外の税目も検討事項として挙げられており、今後の税制改正の動向に注目です。
(注意)
上記の記載内容は、平成26年8月11日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
租税公課のうち損金の額に算入される租税について、いつの時点で損金となるのか、法律上、具体的な定めはなく、単に、「債務の確定」が要件となっているにすぎません。 課税実務では、租税公課の債務確定時期について、一般的に、申告納税方式による租税と賦課課税方式の租税とに大別して、損金算入時期を具体的に明示しています。
◆申告納税方式と賦課課税方式 申告納税方式による租税については、当該納税申告書が提出された日の属する事業年度とし、更正又は決定に係る租税についてはその更正又は決定があった日の属する事業年度とされています。 一方、賦課課税方式による租税にあっては、賦課決定のあった日の属する事業年度とされています。 但し、法人がその納付すべき租税について、その納期の開始の日の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理した場合には、当該事業年度とすることも容認されています。 なお、納期が分割して定められているものについても、それぞれ納期の開始の日の属する事業年度とすることが容認されています。
◆賦課決定のあった日とは 固定資産税は賦課課税ですので、その損金算入については、賦課決定のあった日の属する事業年度ということになります。 賦課決定のあった日、といってもその日をどのように特定するか、ですが、それぞれの市町村に賦課決定日を確認するなど、いろいろな考え方なり解釈もあるかと思います。 しかし、法律上の効力発生時期は、特段の定めがない限り「到達主義」によっていると解されています。民法においてもその旨が規定されています。 ちなみに、地方税法20条4項においては、「通常の取扱いによる郵便又は信書便によって第1項に規定する書類を発送した場合には、この法律に別段の定めがある場合を除き、その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律2条3項に規定する信書便物は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する」とあります。 したがって、「賦課決定のあった日」とは賦課決定書の到達日であり、その日をもって債務が確定したものとして、その日の属する事業年度に損金の額を算入するのが相当と考えられます。 |
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2014度税制改正において、耐震基準に適合しない中古住宅を取得した後に耐震改修工事を行って入居した場合であっても、住宅ローン減税等の適用を受けられるようになりました。
2014年4月1日以後に、中古住宅の取得をし、自己の居住の用に供する場合に適用されます。
改正前は、取得の日前2年以内に、耐震基準適合証明書による証明のための家屋の調査が終了したものなど、取得日前に耐震基準に適合する必要がありました。
改正により、耐震基準に適合しない中古住宅を取得した場合でも、取得の日までに耐震改修工事の申請等をし、かつ、居住する日(取得の日から6ヵ月以内の日に限る)までに耐震改修(既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用を受けるものを除く)により、その住宅が耐震基準に適合することの証明がされたときは、その住宅を耐震基準に適合する既存住宅とみなして、住宅ローン減税の適用を受けられることになります。
この特例措置の適用は、住宅ローン現在だけでなく、住宅取得等の資金に係る贈与税の非課税措置等、既存住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置にも適用されます。
耐震改修の「申請」が減税適用のポイントになりますが、申請書(耐震基準適合証明申請書、仮申には、申請者(家屋取得(予定)者)の住所・氏名、家屋取得日(予定日)、取得(予定)の家屋番号・所在地、耐震改修工事開始予定日などを記入します。
また、老朽化した建物等の耐震改修に関しては、既存建築物の耐震改修投資の促進のための税制措置も創設されております。
具体的には、耐震改修促進法の耐震診断結果の報告を2015年3月31日までに行った事業者が、2014年4月1日からその報告を行った日以後5年を経過する日までに、耐震改修対象建築物の耐震改修により取得等をする耐震改修対象建築物の部分について、その取得価額の25%の特別償却が可能となりました。
なお、耐震改修対象建築物とは、既存耐震不適格建築物のうち耐震診断結果の報告が耐震改修促進法により義務付けられたものをいいます。
(注意)
上記の記載内容は、平成26年7月10日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会の中小企業関係4団体は、「中小企業の成長と地域の再生に向けた政策の断行を」と題した要望書において、法人実効税率の引下げを提案するとともに、外形標準課税の中小企業への適用拡大や欠損金繰越控除の利用制限などに対して反対の立場を表明しました。
中小企業関係4団体の共同提言書によりますと、法人税改革、電気料金引下げ、中小企業・小規模事業者への支援策の拡充としてそれぞれまとめられております。
法人税改革については、海外主要国並みの20%への引下げが必要であると提言しております。
また、アジア諸国をはじめとする海外との競争に打ち勝てる水準に、中小企業の軽減税率を拡充すべきだとして、10%税率と適用所得金額の拡大を求めております。
さらに、資本金3,000万円以下の小規模法人に対する軽減措置も導入すべきであると提言しております。
法人実効税率引下げの代替財源に挙がっている、資本金や従業員数など会社の規模をもとに課税する外形標準課税の適用範囲を中小企業に広げる政府内の議論に対しては、「赤字法人175万社への影響が甚大」として「断固反対」の立場を鮮明にしております。
さらに、92万社の企業が利用している欠損金繰越控除の利用制限や、中小企業向け租税特別措置の利用制限、留保金課税の中小企業への拡大などにも反対しております。
電気料金引下げについては、原子力を火力で代替するための燃料費負担により、産業部門の電気料金が震災前比で約3割上昇しているとして、「原子力発電の安全確認・再稼動が最重要・最優先課題」と提言しております。
また、再生可能エネルギー固定価格買取制度賦課金はすでに0.75円/kWhに達しており、国民負担総額は6,520億円/年にのぼり、今後も急速な国民負担増大が続くとして、同制度の抜本的見直しや、地球温暖化対策税の税率引下げも求めております。
今後の税制改正の動向に注目です。
(注意)
上記の記載内容は、平成26年8月11日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
今では、中小法人でも自力で海外に全額出資の子会社を設立するケースが多く見受けられます。
ただ、現状において進出企業が順調に事業展開・発展しているとは言い難く、業績の進展が思わしくなく、中途で出資額を現地の法人に売却、あるいは、進出している他の本邦法人に売却し撤退するといったケースもあります。
中には、全額出資の子会社が業績悪化等により債務超過の状態に陥り、業績の回復もままならず、結果的に解散、清算結了に至るケースもあります。
問題は、最終的に全額出資の子会社が解散、清算結了に至り、結果として分配すべき残余財産がないときに当該子会社株式の消滅損または償却損が計上できるかです。
◆子会社株式の消滅損と子会社の欠損金
現行の法人税法では、100%の完全支配関係にある子会社が業績悪化、そして債務超過等により解散、清算結了に至った場合、その子会社株式については株式消滅損を計上することはできません。
しかし、当該破綻した子会社が有する未処理欠損金は、当該100%子会社株式を保有する親会社に引き継がれ、親会社の欠損金として繰越控除の対象になり、その控除期間も引き継ぎます。
なお、この規定の適用を受けるためには、原則、50%超の支配関係が5年超継続していなければなりません。
◆外国の子会社株式への適用
この子会社株式の消滅損、未処理欠損金の引き継ぎは、完全支配関係にある外国子会社株式にも適用されるかですが、この規定の適用は、内国法人間の完全支配関係(100%支配)を前提としていることから、外国子会社と親会社である内国法人との間には適用されません。
したがって、子会社株式の消滅損は計上できますが、当該子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎはできません。
また、内国法人間であれば、100%子会社が債務超過等に陥って業績の回復が見込まれない場合であっても株式の評価損は計上できませんが、外国子会社であればその時価に達する金額までは評価損を計上することができます。
いずれにしても、子会社株式の消滅損及び子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎは、全額出資して設立した外国子会社株式には適用されない、ということです。
◆遺族年金の基本
一般的に女性は男性より長生きしますので専業主婦で万一夫が亡くなった時に夫の遺族年金で生活ができるのか気になるところです。夫の死後1人で生きて行くにはどの位の準備が必要になるでしょうか。
国民年金の「遺族基礎年金」に、厚生年金に加入していた人は「遺族厚生年金」が上乗せされます。死亡した被保険者の報酬比例部分年金額×3/4+加算で計算されます(遺族基礎年金については18歳の年度末までの子がいる場合に支給されます)。
◆老齢厚生年金受給者の夫が亡くなった時
老齢厚生年金受給中の夫が亡くなった時、妻が65歳以上の時は夫の老齢厚生年金の一部の遺族厚生年金を受け取れます。
受け取り方は3つの方法がありいずれも妻本人の老齢基礎年金は全額支給されます。厚生年金の加入をしたことのある妻は最も高い金額が支給されます。
①自分の老齢厚生年金のみを受け取る。
②夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する部分を受け取る。
③妻の老齢厚生年金の2分の1、夫の老齢厚生年金の2分の1を合計した相当額を受け取る。
②と③は妻が厚生年金に加入していた場合で妻の老齢厚生年金を支給した後に夫の老齢厚生年金から差額の遺族厚生年金が受け取れます。一般的な専業主婦は②のタイプが多く、妻も働き保険料が高かった時や、厚年加入期間が長かった時は①や③となることもあります。また、遺族年金は非課税です。
◆生活費はいくら用意しておくとよいのか
現在老齢厚生年金を受けている65歳以上の妻は1カ月の公的年金収入は12万円程度の人が多いといいます。
支出の面から見てみると60歳以上の女性単身者の1カ月の支出は15万円位(総務省調べ)年金より支出が3万円多いことになり、例えば夫の死後20年生きるとすれば700万円以上不足します。住まいが持ち家か賃貸かでも変わるでしょうし、介護や病気に備えてとなると1千万円以上は必要でしょう。しかし子供が独立前にそこまで考える人は少ないかもしれませんね。
今日、約80%の企業が目標管理制度を実施していますが、そのプロセスでは、目標設定時には想定していなかった事態が生じるなど問題がよく起こります。
◆プロセス管理でよくある誤り
管理者のプロセス管理の視点が、「評価の納得性」に置かれる結果、「部下が目標達成のために、どのような努力をしたのか、それはどの程度の評価に値するのか」という点を意識しがちになります。
しかし、目標管理制度の本来の目的は「経営目標をブレークダウンして組織や個人の目標を設定し、それを達成する業績管理を行うこと」にあるのですから、中間面談などプロセス管理では、
1.どのような目標達成阻害要因が生じたのか、または予想外の成功要因が出現したのか(事実状況の確認)
2.阻害要因の排除、または成功要因の活用によって、業績目標の達成を図り、場合によっては当初の目標を大きく超える業績をあげるにはどのような対策が必要か(的確な対策の検討と決断)
3.その対策をスピーディーに実行するには、どうしたらよいか(対策の実行)
という点を重視すべきであり、納得性が高い評価はその後に自ずからなされるものなのです。
◆何故誤りが起きるのか
管理者がプロセス管理で、評価の視点を意識し過ぎるのは、経営者または人事責任者が「目標管理制度を業績評価の手段として使おう。そうすれば納得性が高い評価ができる」と考えた時から始まっています。
したがって、制度運用マニュアルの中間面談実施要領では“目標達成プロセスでの事実状況に注目した納得が得られる評価に重点を置いてチェックすること”が記載されており、考課者訓練でもそのように指導されているケースが多いようです。
◆トップ・人事責任者の留意点
目標管理制度の本来の目的を再確認し、管理者による中間面談や日常のフォローアップが、「評価の視点」に偏り過ぎていないか、「プロセスの管理で最重要な目標達成の阻害要因や成功要因の発見と対策に向けられているか」をチェックし、誤りがあれば、正しいプロセス管理のあり方を管理者に要請、指導すべきです。
国税庁は、2013年度における国税電子申告・納税システム(e-Tax)の利用状況を公表しました。
それによりますと、同年度のe-Taxの利用合計数は、2,554万5,229件と前年度の2,278万9,483件に比べて約12.1%増と大幅に増加しました。
このうち、2012年5月に財務省において決定された国税庁の「業務プロセス改革計画」の重点手続きの利用件数は、1,770万7,793件と前年度(1,729万5,971件)に比べ約2.4%増加しました。
項目別の利用件数をみますと、申告関係では、最も多いのが「所得税」の937万7,932件で、以下、「法人税」173万3,944件、「消費税(法人)」128万6,024件、「消費税(個人)」59万9,094件、「印紙税」8万4,858件、「酒税」3万8,655件と続いております。
法定調書は、「給与所得の源泉徴収票」や「利子等の支払調書」など173万7,536件、申請・届出等は、「納税証明書の交付請求」が3万7,223件、「開始届出書」が281万2,527件でした。
一方、重点手続き以外でみると、上記以外の「申請・届出等手続き」は、前年度の260万7,195件から71.4%も増加して446万8,291件、また「納付手続き」に関しても同288万6,317件から16.7%増の336万9,145件にそれぞれ増えました。
また、これまでのe-Tax普及拡大に向けた具体的な取組みをみますと、
①医療費の領収書や給与所得の源泉徴収票等第三者作成の書類の添付省略税理士等が納税者の依頼を受けて税務書類を作成し、電子申告等を行う場合の納税者本人の電子署名を省略
②e-Taxを利用した還付申告書については、処理期間を通常の6週間程度から3週間程度に短縮などがあります。
そして、2013年度からは新たに、
①自宅等からe-Taxにより納税証明書の交付請求を行い、税務署の窓口で書面にて納税証明書の交付の請求を受ける場合の納税者本人の電子署名の省略
②e-Taxを利用した還付申告書について、特に、個人の自宅等からのe-Tax還付申告のうち1月・2月申告分については、2~3週間程度に処理期間を短縮などが実施されております。
(注意)
上記の記載内容は、平成26年8月4日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
国税庁・国税不服審判所は、不服の申立て及び訴訟の概要を公表しました。
それによりますと、2014年3月までの1年間(2013年度)の不服申立て・税務訴訟をとおしての納税者救済・勝訴割合は8.6%となりました。
異議申立ての発生件数は、消費税等(42.9%減の756件)を始め、ほとんどの税目が減少し、全体では前年度から31.1%減の2,358件となりました。
処理件数では、「取下げ等」355件、「却下」272件、「棄却」1,654件、「一部取消」179件、「全部取消」74件の合計2,534件となりました。
納税者の主張が一部でも認められたのは253件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度を0.1ポイント上回る10.0%でした。
また、税務署の処分(異議決定)を不服とする国税不服審判所への審査請求の発生件数は、消費税等(19.0%減の1,825件)を始め、ほとんどの税目が減少し、2,855件となり、前年度に比べ20.7%の減少となりました。
処理件数では、「取下げ」159件、「却下」197件、「棄却」2,481件、「一部取消」163件、「全部取消」73件の合計3,073件となりました。
納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は、同4.8ポイント減の7.7%となりました。
一方、訴訟となった発生件数は、所得税(26.6%減の94件)、法人税(21.8%減の61件)など、相続・贈与税(29.4%増の44件)とその他(31.3%増の21件)を除く多くの税目で減少したことから、前年度を14.7%下回る290件でした。
終結件数は、「取下げ等」24件、「却下」21件、「棄却」259件、「国の一部敗訴」9件、「同全部敗訴」15件の合計328件となり、国側の敗訴(納税者勝訴)割合は同1.0ポイント増の7.3%となりました。
全体でみてみますと、2013年度中に異議申立て・審査請求・訴訟を通して納税者の主張が一部でも認められたのは、処理・訴訟の終結件数の合計5,935件(前年度7,287件)のうち513件(同800件)で、その割合は8.6%(同11.0%)と、前年度に比べ2.4ポイント減少しました。
(注意)
上記の記載内容は、平成26年8月4日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
◆生計一親族の判定(養育費の負担)
国税庁ホームページの質疑応答事例には、子がある夫妻が離婚した後の「扶養控除(所得税)」を、生活が別となった元夫・元妻のどちらに適用できるかという事例が紹介されています。元妻が子を引き取り、元夫が養育費を負担しているケースでは、その養育費の支払いが①扶養義務の履行として、②「成人に達するまで」など一定の年齢に限って行われるものであるときは、その養育費を負担した期間については、子は元夫の「生計を一にしているもの」として、元夫は扶養控除の対象とすることができます。
ただし、養育費と慰謝料・財産分与の金額が明らかに区分できない場合には、この例には当てはまりません。また、子が元夫の控除対象扶養親族に該当するとともに、元妻の控除対象扶養親族にも該当することになる場合には、扶養控除はいずれか一方のみに適用されることになります。
◆「扶養控除」の取り合いになった事例
このようなケースでは、別れた元夫婦が子をどちらの控除対象扶養親族とするかという話し合いを持たずに、両者が各々の控除扶養親族として申告を行ってしまうこともあるようです。争いになった事例として、平成19年の国税不服審判所の裁決例があります。別れた元夫婦が各自の勤務先に扶養控除等申告書を提出し、長女を各々の控除扶養親族として平成18年分の年末調整を受けていたというものです。このケースでは元妻が扶養控除等申告書を職場に平成17年12月に提出し、元夫が平成18年1月に提出していることから、長女は、先に扶養控除等申告書を提出した元妻の控除対象扶養親族と判断されました。
◆「決められない場合」の判定方法は2つ
所得税法施行令には、2以上の居住者が同一人を自己の扶養親族として申告書等に記載した場合の規定があります。
① 既に片方の居住者が申告書等の記載により扶養親族としている場合→その居住者の扶養親族
② ①によっても、いずれの扶養親族とするか定められない場合→合計所得金額の大きい方の居住者の扶養親族
上記の裁決では、①の段階で判定ができたため、元夫の所得の方が大きいという事実は考慮されませんでした。